さて、今回は世界の大手製薬企業の第二四半期業績のまとめ記事を作ってみました。
大手製薬企業第二四半期業績
各社業績は、こんな感じです。
このうち、ロッシュ(RHHBY)は利益額を公表していないので記載していません。またノバルティス(NVS)の利益には、GSKコンシューマーヘルスケア株のうちNVS持ち分の売却益57億ドルが加算されています。イーライリリー(LLY)は赤字となっていますが、これはAMROバイオサイエンシズを買収した影響が表れています。
では、上記のチャートをちょっと形式を変えて表示してみましょうか?
利益率は、ファイザー(PFE)、アッヴィ(ABBV)、アムジェン(AMGN)、ギリアド・サイエンシズ(GILD)が20%を超えています(NVSは、上で述べた理由のため除外しています)。
前の3社はともかく、GILDが意外に頑張っていますね。それから、バイオ医薬品を主力に据えるメーカの収益性が高いことが伺えます。
各社品目別状況
JNJ(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
ステラーラ | 乾癬 | 13.41 | 36% |
ザイティガ | 前立腺がん | 9.09 | 63% |
インヴェガ | 統合失調症 | 7.2 | 15% |
イムブルビカ | リンパ腫・白血病 | 6.2 | 38% |
イグザレルト | 抗凝血 | 6.79 | 6% |
ダルザレックス | 多発性骨髄腫 | 5.11 | 71% |
レミケード | 関節リウマチ | 13.2 | 14% |
ステラーラが伸びています。レミケードも頑張っています。
RHHBY(ロシュ)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
ハーセプチン | 乳がん | 18.78 | 2% |
パージェタ | 乳がん | 7.11 | 28% |
マブテラ/リツキサン | 非ホジキンリンパ腫 | 17.68 | -11% |
アバスチン | 抗がん剤 | 18.05 | 1% |
オクレブス | 多発性硬化症 | 5.7 | 195% |
パーセプチンまだまだ強し! アバスチンも負けていません。
PFE(ファイザー)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
プレブナー | 肺炎 | 12.5 | 8% |
アイブランス | 乳がん | 10.27 | 20% |
エンブレル | 関節リウマチ | 5.51 | -11% |
ゼルヤンツ | 関節リウマチ | 4.63 | 38% |
リリカ | 神経痛 | 11.34 | 3% |
リピトール | 高コレステロール血症 | 5.21 | 17% |
プレブナーやアイブランスに並んで、リリカは相変わらず頑張っています。
リリカの有効性分(原薬)はプレガバリンで、上記のような構造です。この程度の構造の化合物なので、間違いなく原価率は非常に低いと思われます。PFEにとってはウハウハでしょうね。
NVS(ノバルティス)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
ジレニア | 多発性硬化症 | 8.66 | 3% |
コセンティクス | 乾癬 | 7.01 | 43% |
ルセンティス | 加齢黄班変性症 | 5.15 | 8% |
グリベック | 白血病 | 4.16 | -18% |
タシグナ | 白血病 | 4.88 | 5% |
サンドスタチン | 先端肥大症 | 3.99 | -1% |
コセンティクスが伸びています。需要のあるバイオ医薬品は売上に貢献しますね。
MRK(メルク)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
キイトルーダ | 各種がん | 16.67 | 89% |
ジャヌビア | 糖尿病 | 15.35 | 2% |
ガーダシル | 子宮頸がん予防 | 6.08 | 30% |
ゼチーア | 高コレステロール血症 | 2.26 | -39% |
キイトルーダが、ジャヌビアをあっさりと超えてしまいました。どこまで伸びるでしょうか?
GSK(グラクソスミスクライン)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
セレタイド/アドベアー | 気管支喘息、COPD | 7.97 | -28% |
エリプタ | 気管支喘息、COPD | 6.89 | 26% |
ベントリン | 気管支喘息、COPD | 2.29 | 0% |
トリーメク | エイズ | 9.23 | 9% |
テビケイ | エイズ | 5.5 | 25% |
ポートフォリオが偏っていない?
SNY(サノフィ)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
ランタス | 糖尿病 | 10.6 | -21% |
トゥジェオ | 糖尿病 | 2.58 | 8% |
ロべノックス | 抗凝血 | 4.49 | -2% |
プラビックス | 抗凝血 | 4.45 | 1% |
オーバジオ | 多発性硬化症 | 4.81 | 1% |
うーん、ちょっと厳しくなってきたか・・・。
ABBV(アッビイ)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
ヒュミラ | 自己免疫疾患 | 51.85 | 10% |
イムブルビカ | リンパ腫・白血病 | 8.5 | 36% |
ルプロン | 前立腺がん | 2.23 | 6% |
クレオン | 膵外分泌機能不全 | 2.19 | 11% |
デュオドパ | パーキンソン病 | 1.08 | 32.90% |
ヒュミラは相変わらず強いですね。今年も、世界No.1の売り上げを叩き出すのは間違いないでしょう。
LLY(イーライリリー)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
ヒューマログ | 糖尿病 | 7.7 | 13% |
トルリシティ | 糖尿病 | 7.8 | 62% |
バサグラー | 糖尿病 | 2.02 | 133% |
ジャディアンス | 糖尿病 | 1.47 | 43% |
アリムタ | 抗癌剤 | 5.56 | 4% |
シアリス | 男性不妊 | 5.39 | -14% |
フォルテオ | 骨粗鬆症 | 4.35 | -3% |
サイラムザ | 各種がん | 2.19 | 17% |
LLYと言えば糖尿病です。糖尿病治療薬ポートフォリオを、がっちりと構築していますね。
AMGN(アムジェン)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
エンブレル | 関節リウマチ | 13.02 | -11% |
ニューラスタ | がん化学療法による好中球減少 | 11 | 1% |
プロリア | 骨粗鬆症 | 6.1 | 21% |
アラネスプ | 腎性貧血 | 4.72 | -12% |
エックスジーバ | 骨巨細胞腫 | 4.52 | 14% |
センシパル | 腎疾患、甲状腺機能亢進 | 4.2 | -2% |
さて、ポートフォリオの入れ替えは上手く行くでしょうか?
BMY(ブリストルマイヤーズスクイブ)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
オプジーボ | 各種がん | 16.27 | 36% |
エリキュース | 抗凝血 | 16.5 | 40% |
オレンシア | 関節リウマチ | 7.11 | 9% |
スプリセル | 白血病 | 5.35 | 6% |
ヤーボイ | 各種がん | 3.15 | -2% |
バラクルード | B型肝炎 | 1.79 | -34% |
オプジーボは好調ですが、MRKのキイトルーダに抜かれましたね。非小細胞肺がんの1stラインを取れなかったことが、ボディーブローとして効いているのかも?
GLID(ギリアド)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
ゲンボイヤ | HIV | 11.6 | 35% |
ツルバダ | HIV | 7.65 | 94% |
デスコビ | HIV | 4.03 | 41% |
オデフセイ | HIV | 3.85 | 49% |
ハーボニー | C型肝炎 | 3.31 | -76% |
エプクルサ | C型肝炎 | 5 | -57% |
ハーボニーの売り上げが急減したときは、『ここまでか?』と思ったのですが、HIV関連に上手くポートフォリオを組み替えてきています。商売上手な会社ですね。
AZN(アストラゼネカ)
製品名 | 対象疾患 | 売上(億ドル) | 前年同期比 |
シムビコート | 気管支喘息、COPD | 6.72 | -8% |
パルミコート | 気管支喘息、COPD | 2.87 | 20% |
ネキシウム | 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 | 4.42 | -28% |
クレストール | 高脂血症 | 3.38 | -42% |
ブリリンタ | 抗凝血 | 3.16 | 13% |
ファークシガ | 糖尿病 | 3.4 | 34% |
タグリッソ | 肺がん | 4.22 | 77% |
リンパーザ | 乳がん | 1.5 | 154% |
シムビコートもパルミコートも、ぶっちゃけ昔からあるステロイドそのまんまですからね・・・。ネキシウムも、オメプラゾール以来の『一体いつからおるんやねん?』という薬ですし・・・。もっと頑張ってもらいたいものです。
『まとめ』らしきもの
いかがだったでしょうか?
全体をざっと眺めてみると、バイオ医薬品をポートフォリオに組み込んだ会社とそうでない会社の差が、徐々に表れてきているような印象を受けます。
今回まとめを作りましたが、この中で私はJNJしか保有していません。また、JNJに追加投資することも、他の銘柄に投資することも全く考えていません。
医薬品産業ほど、ハイリスク・ハイリターンな業界はありませんからね。私はミドルリスク・ミドルリターンが好みなので・・・
でわ。
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