さて、読者からのご相談(1)-1および(1)-2でご相談を受けたみやみやさんから、またまたご相談を受けました。
今回のご質問は色々な内容を含んでいますので、幾つかに分けて回答したいと思います。
ネットサーフィン気分で株を買う・・・?
「なにかいいものは無いかしら」とネットサーフィンするのが大好きです。 なので株も投資信託も、ショッピング気分で、ついつい覗いてしまい、ちょっと気になる株があると、気軽にふらふらと購入してしまいます。 「気になる」の基準は、問わず語りさんのブログで見たやつとか、アメリカ株四季報で勧められていたやつとか、もともと好きな分野(素材)の株で購入できそうな価格の会社とかです。そういうこともあり、購入を始めて1ヶ月ほどですが、銘柄が20ほどになっています。 20年後の配当金を頂くためにはじめたはずなのに、すでに目的から外れています。軌道修正したいです。どうすれば?
さて、みやみやさんから今回の質問メールを頂いたのは12月15日ですが、その後も市場は下落を続けていますので、みやみやさんのポートフォリオも含み損が発生していることと思います。
そして、直近の下落でそれが良くお分かりになられたと思いますが、株はネットサーフィン気分で買うものではありません。
『株を買うのは楽しい』、これは私も非常に良く分かります。ですが、買うのであれば『しかるべき株』を買うべきであり、良さげな株をふらふらと買うのは危険すぎます。
・・・まあ、説教はこの位にして、ではどのように軌道修正するか考えてみましょう。
以下、ランダムに話を進めます。
配当金目的ならば『素材株』は買ってはいけない!
まず、頂いたメールにある『もともと好きな分野(素材)の株』を購入するのは、配当金を目的とした投資としては
非常に危険!
です。その理由を以下に説明しましょう。
株は、大きく分けて景気敏感株とディフェンシブ株の2つのカテゴリーに分類されます。
このうち景気敏感株とは、景気動向によって需要が大きく変動する業界に所属する企業の株で、具体的には鉱業、化学、機械、自動車、建設等がそれに該当します。
一方、ディフェンシブ株とは、食品・生活用品・医療・電気・鉄道・通信といった、景気の変動を受けにくく安定した需要を確保できる業種の企業の株です。
これらのうち、景気敏感株は景気による影響をもろに受けるため、株価変動が非常に激しいです。景気悪化に伴って収益が大きく変動し赤字になることも珍しくないために、株価が3分の1や場合によっては10分の1に下落するなどということも普通に起こり、メンタルに良くありません。
また、収益が安定しないために、景気悪化時には減配あるいは無配となることも良くあります。したがって、配当目当ての投資には向かない銘柄となります。
みやみやさんがお好きな素材会社は、業種的にはどストライクな景気敏感株です。したがって、みやみやさんの目的である、『老後の生活のために配当金を得る』ためには
最も忌避すべき銘柄!
と言えます。ですから、私からアドバイスするとしたら、多少の損失はやむなしとして今のうちに
即刻売却!
されるのがよろしいかと思います。
『配当金狙いで景気敏感株を買うのは間違っている』ことを理解していただいたとして、ではどんな株を買えば良いのか? 以下で説明しましょう。
まずはETFを考えてみませんか?
実は、みやみやさんとのメールのやり取りを通して感じるところがありましたので、みやみやさんにはまずは
ETF
をお勧めしたいと思います。具体的には、VYMやHDVが良いと思われます。これらを順番に月に1回ずつ(つまり各々を年間6回)買っていくのが、投資初心者にはお勧めできる方法と思います。
購入金額は手数料負けしない10万円程度以上とし、それ以上増額できるのであれば手数料負担の割合が減少しますのでなお良しとします。
なお、VYMとHDVはいずれもドル建てですが、VYMについては円建てで購入できる『楽天・米国高配当株式インデックスファンド』という商品があります。
信託報酬は、本家のVYMの0.08%には及ばないものの0.2%以下と良心的なレベルであり、少額から積立もできるという利便性もあります。外国税額控除が受けられないという欠点はありますが、為替の事を考えたくない方や手間をかけずに米国配当株に投資したいという方にはお勧めできる商品と思います。
・・・ただし、ショッピング好きのみやみやさんにとっては、ETFへの投資だけでは満足できないかもしれません。
『やっぱり個別株を買いたい!』となった時に、ではどういった株を買うと間違いがないかを、次にご説明したいと思います。
投資ではキャッシュフローを確認することが一番大事!
株を買う時に一番重視すべきはキャッシュフローです。
キャッシュフローとは、企業活動で得たお金から企業活動で必要なお金を引いたものであり、要はその企業がきちんと儲けているのかを示す指標です。
キャッシュフローには3つの種類があるのですが、ここでは細かい説明は省略して『株式投資では企業の営業キャッシュフローを確認することが必須』と覚えておいていただければと思います。
さて、さらに話を進めましょう。企業の実力を示す指標としては営業キャッシュフローから算出される
営業キャッシュフローマージン
を最重要視すべきと私は考えています。難しい言葉が出てきましたが、お分かりいただけるよう以下で説明します。
営業キャッシュフローマージンとは、営業キャッシュフローを売上高で割った数字をパーセント表示したものです・・・が、みやみやさんが
(?|?)
となっている様子が目に浮かびますので、具体的にどのように算出するか説明します。簡単に計算できますから、心配しなくて良いですよ。
営業キャッシュフローマージンの算出方法
まず、MornigstarのHPに行きます。日本ではなく本家のほうです。そうするとこんな画面がでます。
このHPの上の方にある『Stock, Fund, ETF Quotes, Reports, Articles, Videos』のところに、調べたい会社のティッカー(略号)を入力して検索します。ここではマクドナルド(ティッカーはMCD)を調べることとしましょう。
『MCD』と入力して検索すると・・・こんな画面になります。
英語がずらっと並んでいますが、ご心配なく。あと少しですからね。このうち2017年のデータを用いて営業キャッシュフローマージンを算出しましょう。
計算はチョー簡単です。上の画像のRevenue(売上高のことです)とOperating Cash Flow (営業キャッシュフローのことです)の数字(いずれも黄色マーカーで示しています)をピックアップして、以下のように計算します。
営業キャッシュフローマージン(%)
=Operating Cash Flow / Revenue X 100
= 5.55 / 22.82 X 100
= 24.3
ね、チョー簡単に計算できるでしょ?
でも、これを計算できるとできないとでは投資成績が大違いなんです。
営業キャッシュフローマージンが20%以上の株を買うべし!
さて、営業キャッシュフローマージンの計算方法がお分かりいただけたところで、それをどのように使うか非常に重要なポイントを説明します。
まず、売り上げに対して営業利益が多い企業が優良企業であることはお分かりいただけますね? ただ、営業利益は色々とごまかしができるという問題点があります。一方で、営業キャッシュフローは単純にお金の出入りだけを見ているので、ごまかしが効きにくいという利点があります。
したがって、営業キャッシュフローを用いて算出した営業キャッシュフローマージンは、売り上げに対する営業キャッシュフローの比率を示しており、その企業の真の稼ぐ力を示す好適な指標です。
では、営業キャッシュフローマージンがどの位の企業の株を買えば良いのでしょうか? 答えは
営業キャッシュフローマージンが20%以上の銘柄を買ってください!
・・・いや
営業キャッシュフローマージンが20%以上の銘柄しか買ってはいけない!
と肝に銘じてください。
後はPERを確認して(20以下であることは必須、出来れば15以下)さらに営業利益の推移をみて(過去数年で少しずつでも右肩上がりであること)銘柄を選べば、長期的には報われる投資が出来るでしょう。
そして買うのであれば、先に説明した
ディフェンシブ株!
を選ぶべきです。
先ほどのMCDもそうですが、安心して投資できるディフェンシブ株が米国には数多くありますので、それらから選んで投資されるのが良いと思われます。具体的な銘柄は、多数の米国株ブロガーさんが紹介されているので、それを参考にすれば良いかと。
・・・さて、今までご説明してきてお気づきになられているかもしれませんが、米国株の説明ばかりで日本株の説明をしていませんね。これは、残念ながら
日本株で営業キャッシュフローマージンが20%を超えるディフェンシブ株は少ない!
からであり、議論の対象にならないからです。
私自身は日本株に投資していますが、それは長い経験から得られた自分なりの相場観に基づいて投資しているのであって、初心者には難しい投資対象です。そんな日本株をみやみやさんに積極的にお勧めすることは、私には出来ません。
残りの質問にもお答えします!
では、他のご質問にもお答えします。
株購入の際は、手数料とか考慮に入れるべきですか? 現在は5万円単位くらいで買っています
日本株の購入手数料はかなり下がっていますので、気にする必要はないでしょう。米国株であれば、手数料負けしないためには10万円程度以上で買うべきでしょう。
為替についてもタイミングを見たほうがいいのでしょうか?
私は、あまり考える必要はないという立場です。この点については、関連記事を作成していますのでそちらもご参考にしてください。
『まとめ』らしきもの
みやみやさん、いかがだったでしょうか?
みやみやさんが直近の暴落でどれだけヤラレたのか少し心配なのですが、ETFあるいは良い会社の株を買っておけば長期的には報われるはずです。
短期的には大きく下げることもありますが(最近がそうですね)、そこでめげずに投資を続ける者こそが最後に報われるのが株式投資であることはお忘れなく。
でわ。
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