皆さんは『シラーPER』というものをご存じでしょうか? CAPEレシオという表現でご存じの方もいらっしゃると思いますが、これらは同じものを意味します。
一般に用いられるPERは、単年度の純利益から算出する数値ですが、シラーPERでは過去10年間のインフレ調整後の純利益の平均値を使ってPERを算出します。
これにより、一時的要因による収益の大幅な変動が減殺され、更にインフレの影響も排除できるので、より実質的なPERを算出できることになります。
また、シラーPERは個別株に用いられるここともありますが、通常は株価指数に対して用いられます。
S&P500のシラーPERを見ると米国株は割高としか思えない
さて、シラーPERもPERですから10~20が適正値と考えられますが、さらにシラーPERの場合は25を超えたら警戒レベル、つまり割高であるために何かのきっかけで株価が下落する可能性が高いと見なされることが多いです。
ところで、最近S&P500のシラーPERを改めて見る機会があったのですが・・・
・・・ちょっとビックリしませんか?
『いや、特に驚かない』ですって? そうですか・・・私はビックリしているんですがね。なぜビックリしているのか説明しましょうか?
まず、1990年代後半からシラーPERはほぼ20を超えています。そして、あのリーマン・ショック時でもシラーPERは15程度だったんですね。
リーマンショック時でもPERが15だなんて、そんな・・・
と思いませんか?
リーマン・ショック時には、激烈な株価下落が起こりました。
個人的な経験では、当時の保有株式ポートフォリオの時価総額であっという間に1000万円以上が吹き飛んで涙目になったのですが、その際に個別株のPERは大きく低下しました。
私は、当時は日本株しか持っていませんでしたので、米国株のPERがどの程度だったかまでは把握していませんでしたが、当時の個別米国株の株価推移を今確認すると、同様に米国株でもPERが大きく低下していたことが分かります。
それなのに、改めてS&P500のシラーPERを見ると、リーマンショック時ですらPERの適正値といわれる15に収まっています。そして、近年はリーマン・ショック時以外の期間はPERの高い状態がずっと続いていることが分かります。これには驚くしかありません。
・・・おや、まだ分からないですか? それでは、別の角度から考えてみましょう。
PERとは、株価を1株当たりの純利益で割った値であり、つまりその株をPERが示す年数だけ持ち続けたとしたら元が取れることを示しています。このことは、
その会社が、PERが示す年数だけ同じレベルの業績を叩き出せる!
と投資家が判断して、株に値付けしていることを示しています。
ということはですよ、例えば上の図で一番最新のPERは29.1となっていますから、
投資家はS&P500に含まれる企業群の業績が変わらず29.1年続く!
と考えているわけです・・・
そんなのあり得ないでしょう?
業績を予想できるのか?
最近業績が絶好調のMSFTは、私か買った2013年頃には『冴えない企業』でした。嘘だと思うなら、あの広瀬先生のコメントを見てください。
腐っても鯛という表現がありますが、見かけ上、マイクロソフトの財務諸表はしっかりしているため、バリュー投資家なら一度は検討する株だと思います。
(Market Hack 2013年9月5日投稿より引用)
そう、MSFTはバリュー株扱いだったわけです。それが、今やAzureのおかげで飛ぶ鳥を落とす勢いの急成長企業です。
また、AMZNは今や勝ち組中の勝ち組企業ですが、実は一昔前はキャッシュを確保するのも一苦労でした。それが、2006年にAWSを開始して以来、そこから得られる潤沢なキャッシュを使って快進撃を続けています。
一方で、ITの巨人であったIBMは、両者のはるか後塵を拝している有様ですね・・・。そう言えば、かつては優良企業だったGEも完全にヘロヘロな状態ではありませんか?
ここで言いたいのは、MSFTやAMZNがクラウドサービスで盤石な収益基盤を確立できるということを、例えば20年前の我々は到底予想しえなかったということです。そして、IBMやGEの凋落を予想できた人もいなかったということです。
ましてや、30年先の業績予想など鬼が笑うどころの話ではありません。それなのに、S&P500のシラーPERは直近で30近くを付けているわけですから・・・。
どう考えてもS&P500は高すぎでしょう!
『まとめ』らしきもの
シラーPERが示していることは、米国株は明らかに割高であるということです。
こんな割高の状態がいつまでも続くとは思えません。いずれ大幅な株価下落が来るはずです。いつ来るかは分かりませんが。
でも、『その時』のために、しっかりと準備は進めておくべきでしょうね。
でわ。
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