前回の記事の続きです。
みやみやさんの家計をチェック!
みやみやさんとは、お問い合わせをいただいた後でメールをやりとりして、細かな情報も教えていただきました。
質問: ざっくりとした保険の種類と保険料を教えていただけませんか? 回答 個人年金は払込終了、介護70万円、入院35万円、給与保障2万円、ガン10万円、死亡保障5万円、夫婦二人分で年間120万くらい。 生命保険会社の人は『収入の2割くらいまでを生命保険に組み込んでもいい』というの でこんな感じです。
まず、この回答を見て怒りがこみ上げてきました。
『収入の2割ぐらいまでを生命保険に組み込んでもいい』とは・・・良くもそんなことを言えたものだな、こいつは!
前回の記事で述べたように、日本では病気あるいは不測の場合の社会保障は整備されており、それに各個人で低廉な民間保険をつければ十分です。
保険会社の社員であればそんなことは重々承知しているはずであるのに、利用者の知識不足につけこんでこんな営業をやるとは・・・
全くもって許しがたい!
(念のために申しておきますと、社会保障の充実のために各人の給料から社会保険料がしっかりと引かれています。社会保険料としては表から見えないようになっているだけで、みやみやさんもご主人も(そしてお二人のお勤め先も)しっかり払わされていますよ。それがあるから、追加の民間保険にそれほどお金をかける必要はないのです。)
さて、怒ってばかりいてもしょうがないので、話をご相談への回答に戻します。私は保険の専門家でないので回答の正確性は保証できませんが、まず入院保障は不要でないかと考えます。
近年は、病院での入院日数が以前よりかなり減少しています。医療技術の進歩のため長期間入院が大幅に減少していることに加えて、病床数の不足から在宅療養にせざるを得ないという事情もあります。
そうしたことから考えると、入院保障をうたった保険に入る必要はなく、安価な共済系の保険で十分です。たとえば、県民共済ですと月額2,000円のコースで入院1日目から124日目まで1日あたり5,000円の共済金がでます。これで入院費のかなりの部分がカバーできるのではないでしょうか?入院日数が短期なのであれば。
また、そもそも入院対応の保険が本当に必要かも論点となります。例えば、1か月入院して1日あたり10,000円が必要だったとします。この場合は、30万円のお金を準備できていればそもそも保険に入る必要がありません。
さて、以上入院保障についてのみ述べてきましたが、その他の保険も含めると・・・
みやみやさんの世帯収入800万円に対して、民間保険料が120万円とは相当過大と思われます!(前回ご説明した私の保険料支払いとの差を見てください!)
できればしかるべきファイナンシャルプランナーに相談されて、保険料削減の余地について
十分に検討なさること
を強くお勧めします。近くに適当な方が見当たらない場合でも、ウェブで相談できるファイナンシャルプランナーもいますので、そちら探してをあたってみてください。(当て推量を申しますと、保険料を半額にはできるのではないかと思います・・・。)
さて、保険に関しては以上が回答になりますが、メールのやり取りで年金に上乗せするために株式投資を始めたいとおっしゃっていたので、それについても回答します。
みやみやさんが株式投資をする・・・その前に
質問: 投資歴は何年ですか? あるいは初心者ですか? 回答: 全くの初心者です。 質問: 年間の入金可能額は? 回答: 先月ラテ出費を改善したら10万ほど浮いたので、ボーナスを含め、200万円くらいいけると思います(外食と書籍と趣味の習い事を少し減らしました)。ほかに満期を迎えた定期預金は利息を合わせて投資に回すつもりです。 質問: 会社にお勤めと思いますが、65歳まで働くご予定ですか?あるいはそれ以降も? 回答: 夫の勤務先は定年が65歳なので、がんばってもらうつもりです。わたしは、60歳までの予定です。体力があれば働きつづけたいです。 質問 :確定拠出年金にはご加入ですか? 財形等は? 回答: やってないです 個人年金支給が終わるまでは公的年金は我慢して75才以降、公的年金+配当金生活ができたらいいなと思っていて、10年で3000万くらいの投資額にしたいと思います。個人年金生活になると投資に回せる資金の余裕がないと思うので、投資は出来て年間80万くらいかな。 かなり甘々な未来設計です。実際にはどれくらいの資金が必要か、問わず語りさまのお考えを伺えると嬉しいです。 投資を思い立ちましたが証券会社選びに悩み手続きも大変!「外国株」は良いけど為替のこと、具体的な企業やETF、目の前のハードルが目白押しです。idecoやnisaは年齢的に魅力が少なく、始めるならつみたてnisaかなと。
なかなか回答しがいがありそうですね・・・。
まず、生活費から洗い出していきましょうか。
頂いた情報からは、世帯収入800万円に対して教育費が150万円ですので、差し引くと650万円となります。別に頂いた情報からは、貯金等も少な目なご様子です。また家等のローンの有無も情報として頂いていませんが、まだローンを払っていらっしゃると仮定します(そして、仮に住宅ローンがあったとしても、ご年齢から推察してそれなりに支払いが進んでいると仮定します)。
その前提で回答するならば、まず
基礎的な生活費を月25万円=年300万円程度に抑えて、残りで投資資金・家のローン費用を確保すること
が最低条件と考えます。イメージとしては年間250~300万円程度は投資に回したいというところです。
『年間200万円程度は入金可能』とのことで250~300万円と開きがありますが、先ほど述べたように保険料金の削減余地は大きいと思われますし、また外食を減らす(単身赴任で自炊を貫き通している私の経験から言って、外食はコスパ最悪です!)、固定費を下げる(スマホは格安SIMに変える他。前述の保険料の見直しもここに入ります)等の地道な費用削減で入金額はかなり増額できて、その他のお金も加えて『10年で3,000万円程度を投資』というのは十分可能と思われます。
投資は投入資金量が多いほど有利になりますので、
収入ー支出=投資費用+その他費用
のうち投資費用を極大化すべく努力していただきたいと思います。
みやみやさんの家計を拝見すると支出削減余地はかなり大きいと思われますので、まず第一にそこに注力することを強くお勧めします。
では、具体的な投資目標をどこにおくか?
さて、3000万円で株式ポートフォリオを構築した場合、そこからの年間の配当金はどの位期待できるでしょうか?
例えば米国のAT&T(以下略号でTとします)に全額投資したとします。Tの直近の配当利回りは6%を大きく超えていますが、計算を簡単にするために仮に配当利回りを6%とすると、
(投資額)X (配当利回り) X (100%ー税率)÷ 100 = 3000 X 0.06 X (100-30) ÷ 100 = 126
となり、126万円の年間配当となります。(為替は考慮していません。また税率30%としているのは、米国現地での配当金に掛かる税率10%と日本での税率の約20%を足し合わせて計算しています。ちなみに米国での税金は、確定申告で全額ではありませんが取り返すことが出来ます。)
Tは米国最大の通信会社であり業績は非常に安定しています。倒産するようなことはまずありえませんが、1社集中はさすがに危険ですので、Tだけでなく複数の会社に分散して投資すべきです。目安としては、Tのように巨大で業績が安定していて配当をしっかりと出してくれる企業20社以上に分散して投資したいところです。
その結果として、ポートフォリオ全体の配当利回りとしては3.5~5%、配当額としては税引き後で70~100万程度を狙うのが現実的と思われます。高配当株で固めすぎることなく連続増配株もバランス良く加えておくことで、毎年配当額が増えていくようなポートフォリオとしておくことが望ましいと思います。
具体的な企業については、解説している米国株ブログはいっぱいありますので、それをご覧になれば良いかと思います。お勧めなのは『和波の投資生活ブログ』で、当ブログを読むよりもそちらで個別の米国株をご勉強されるほうが、初心者にはずっと有益でしょう。
個人的にはETF投資は好みではありません。理由はETFが登場してから年月が浅いことや時価総額が全般的に少ないことが懸念材料と思っています。ですが、商品自体に瑕疵があるとは思いませんので、ETFに投資するのもありです(ETFという商品に問題があるわけでなく、あくまでも個人の好き嫌いの問題です)。
iDeCoやNISAあるいは積み立てNISAは、税金面で有利な制度ですので積極活用すべきです。
iDeCoは積み立て期間を65歳まで延長する方向で検討が始まっています。そうなった場合、みやみやさんの場合10年以上の投資期間が確保できますので、株式投資信託を買い続けることで資産が入金額よりも増える可能性は非常に高まりますし税控除も馬鹿にできません。65歳延長は十二分にあり得ると思いますので、見切り発車でiDeCoを始めておくのもありかと思います。
最後に2つだけ言っておきたいこと
さて、色々つらつらと述べてきましたが、最後に2つだけ申し上げたいことがあります。
一つ目は、投資で成果を出すために、投入資金を出来る限り増やして資産規模を大きくするよう心がけて頂きたいということです。
先ほどのTの例では、3000万円のポートフォリオから生み出される配当は126万ですが、6000万円のポートフォリオであれば252万円の配当となります。資産額が倍のため配当も倍になっていますね。
また、同じ6000万円で利率3%の米国債を買えば配当は126万円となります。Tの株券と米国債とでは、米国債のほうが安全性は格段に高く値動きもマイルドですから、配当金126万円で満足できるのであればわざわざリスクを負ってTの株を買う必要はありません。
これらの例のように、資産規模が大きくなれば投資に余裕が出てきます。ですから資産規模の最大化を目指して入金の極大化を目指す、そしてそのためには
支出を削減して投入資金を確保していくこと
が必要です。
さて二つ目に申し上げたいことは、
これから確率100%で阿鼻叫喚の株価下落が始まる
ということです。
リーマン・ショック以降、株価は右肩上がりに上昇してきました。しかし各種指標から見ると、これから株価下落が始まるのは確実です。そして、私は自分のポートフォリオの時価が最悪1/2になることも想定して、そのための準備を進めています。
そんな状況で株初心者が株式投資に乗り出した場合、買った端から株価が下落してメンタル的にやられてしまう可能性があります。自分の資産が溶けていくさまをみるのは恐ろしい事ですが、投資家はそうした状況にも耐える必要があり、その覚悟をもって株式投資に臨むべきです。
でも必要以上に心配することはありません。優良株で構成されたポートフォリオやETFであれば下落してもいずれ値段は戻ってきます。また、下落局面で配当利回りが向上している場面で追加投資を行えば配当額が増加します。たじろがずに資金投入を続けることが、投資で最終的に勝つための秘訣です。
・・・さてご質問に対して長々と講釈を述べてきましたが、いかがだったでしょうか? みやみやさんのご参考になれば幸いです。
(なお、銘柄を具体的に挙げて説明した箇所がありますが、その銘柄を買い推奨するものではありません。投資はあくまで自己責任でお願い致します。)
でわ。
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こんにちは!
ご回答ありがとうございました。
生命保険とラテマネーですね。使いすぎてる気はしていました・・・。FPさんを探して相談したいと思います。和波さんのブログも拝見したいと思います。株価が下がるのですね。知らないうちに下がるより先に教えていただけると多少はストレスが違うと思うので助かります。
貴重なお時間をありがとうございました。
みやみやさん
いらっしゃい!
みやみやさんのために結構頑張って書きましたよ(笑)FPさんと相談して家計スリム化できたら教えてください。
さて真面目な話、ここからの株価下落は結構なものになるはずです、購入価格の半額になるぐらいの。ですから心してかかるべきです。
ディフェンシブな超大型株を買うこと、20社以上に分散して買うこと、少しずつ買っていくこと、めげずに買っていくこと、配当は再投資すること、そして10年がかりの大仕事と覚悟をきめること
以上が大切です。